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緩くいこうぜ、人生長いんだ。

お前の人生ようやく始まったようなもんじゃん。

【感想】桐島、部活辞めるってよ / 朝井リョウ

今回の感想は、朝井リョウさんの「桐島、部活辞めるってよ」だ。

過去に、神木隆之介主演で映画化もされた。

実は、この本を読むのはもう四回目だ。

定期的に読みたくなる魅力がある。

 

 

物語は、五人の高校生の視点でそれぞれの日常を描いて進んでいく。

ある日、桐島という男子高校生が急にバレーボール部を辞めることから、それぞれの日常に些細ながらも大きな変化が生まれていく。

 

作中では、スクールカーストが重要な役割を果たしている。

それぞれの学生は、学内での自分の立ち位置を認識した上でそれぞれの生活を送っている。

特に、菊池宏樹と前田涼也は対極に位置する本作品の二人の主人公だ。

 

菊池は、イケメンで運動も出来て彼女もいる、カースト上位に位置するいわゆるイケてる学生だ。

しかし、野球部をさぼっており、特にやりたいこともなくフラフラしている。

そんな自分にどこか手持無沙汰感を抱いている。

 

対して前田は、映画部で運動が出来ないカースト下位に位置するイケてない学生だ。

しかし、映画にかける情熱は熱く、映画を撮っている時間が何よりも幸せであると実感している。

 

物語の最後で、正反対の両者が出会う。

映画の撮影に熱中して顔を輝かせる前田を目の前にして、菊池はこう思う。

一番怖かった。

本気でやって、何もできない自分を知ることが。

ほんとは真っ白なキャンバスだなんて言われることも、桐島も、ブラスバンド部の練習の話も、武文という男子の呼びかけも、前田の「わかってるよ」と答えたときの表情も、全部立ち向かいも逃げもできない自分を思い知らされるようで、イライライライライライラして、

 

何かに熱中する人を馬鹿にしながらも、どこかでそれをうらやましいと思う。

そして、それをやりもしない自分に対して自己嫌悪を抱く。

青春のど真ん中を生きる学生達と、どこかで自分を諦めてしまった自分との間に大きな壁を感じてしまう。

スクールカーストの上で何の気もなしに生きている自分と、底辺でも自分の青春を生きている前田とでは、どちらが良いのだろうかと菊池は思う。

 

 

菊池と前田がメインではあるが、この物語の主人公は登場する学生全員だ。

それは、作品中には出てこない学生もそうだ。

それぞれが自らが主人公の人生という物語の、「青春」と呼ばれる時を生きている。

様々な想いが入り組み、どうにも歯がゆい時もあれば、何かに熱中できる時もある。

そんな複雑な感情の動きを、本作は丁寧かつ鮮明に描いている。

 

ちなみに、映画版は独自の解釈を加えたり、同時間の映像を別視点で描いたりと、かなり工夫が凝らされた作りになっている。

菊池を演じた東出昌大と、前田を演じた神木隆之介の演技に引き込まれる、お気に入りの作品だ。

 

【小説】

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

 

  

【映画】

桐島、部活やめるってよ