緩くいこうぜ、人生長いんだ。

お前の人生ようやく始まったようなもんじゃん。

【感想】ハーモニー / 伊藤計劃

友人に勧められて、初めて伊藤計劃の作品「ハーモニー」を読んだ。

以前から書店で存在は知っていて、興味はあったのだが、踏み出せていなかった。

友人が「これはやばいよ」と言っていた通り、やばかった。

 

伊藤計劃は2009年に逝去され、本作が遺作となっている。

去年、処女作「虐殺器官」と共にアニメ化され、話題になったらしい。

アニメ版は観ていない。

 

 

物語の舞台は近未来。

世界的な核戦争と暴動の後に、人間が思いやりと健康を最重要視する社会。

人々は自らの中にナノマシンを入れ、食事や生活週間を全て外部からのアドバイスに頼り生活している。

また、自らの情報を外部に公開し、全員で思いやりを持って関わりあうことをルールとしている。

そんな社会に嫌気がさした高校生の御冷ミァハは、主人公の霧慧トァン達と共に社会への反逆を企む。

それぞれが大人になった後、世界を揺るがす事件が勃発する。

 

非常にロジカルに書かれた物語と作り込まれた設定、そして物語の最後に明らかになる衝撃の事実に惹き込まれる。

 

本作はいわゆるディストピアものだ。

特に、「人間にとって意志とは何か」ということが問われている。

物語の舞台では、ケガや病気のリスクがない代わりに、自らの身体、意志決定を外部や機械に丸投げし、言いなりになっている。

また、常に他者に対して思いやりを持つように教育されているため、自らの意志というものが軽視されている。

便利で平和な社会である代わりに、人は身体的も精神的にも均一化されているのだ。

全ての人が均一な体つき、健康、意志を持つように管理されている社会では、果たして人は自らの意志で生きていると呼べるのだろうか。

 

 

現実世界でも、ウェアラブル端末や医療技術の発展が目覚ましい。

意志に関しても、口コミサイトや人工知能による推薦など、自らが考える機会が減ってきている。

物語の中の世界はかなり誇張したものであるとは思うが、いずれ現実になるのではないかと恐ろしくなってしまうリアリティーがある。

様々なものが生まれ、より便利になる現代だからこそ、人間とは何か、意志とは何かという問いを意識する必要があるのだと思う。

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)