緩くいこうぜ、人生長いんだ。

お前の人生ようやく始まったようなもんじゃん。

【感想】幸福な食卓 / 瀬尾まいこ

本作のテーマは家族だ。

 

いきなり父親を辞めると言い出して大学受験を目指す父親

別居をして家事や仕事をエンジョイし、定期的に料理を届けにやってくる母親。

元神童にも関わらず何事にも中途半端な兄。

そんな家族にちょっとした違和感を覚える佐和子。

 

作中では、このような家族の姿が「それぞれが家族の一員としての役割を放棄している」と説明されている。

 

「家族」という集合体を構成する以上、その一員にはそれぞれ役割がある。

しかし、主人公の家ではその役割が放棄され、それぞれが個人として生きている。

それは家族であるが家族でないようなものに思える。

だから、物語の終盤まで佐和子は何か困ったことがあっても家族に頼ることをしない。

同様に、他の家族のメンバーも互いに頼ることをしない。

 

しかし、ある事件をきっかけに佐和子が失意の底に落ちた時に、以下のようなセリフを言われる。

家族は作るのは大変だけど、その分、めったになくならないからさ。あんたが努力しなくたって、そう簡単に切れたりしないじゃん。だから、安心して甘えたらいいと思う。だけど、大事だってことは知っておかないとやばいと思う。

どんな形であろうと、家族は家族であり、他人以上の絆を持っている。

だからこそ、頼ってもいいのだと。

 

人は、なんでも自分一人で問題を乗り越えていこうとする。

しかし、それが出来る時と出来ない時がある。

そんな時は他の人に頼ってみてもいい。

家族や友人、色々な人に守られて生きているのだと思える、心温まる物語だ。

 

幸福な食卓 (講談社文庫)

幸福な食卓 (講談社文庫)