緩くいこうぜ、人生長いんだ。

お前の人生ようやく始まったようなもんじゃん。

【感想】小説 言の葉の庭 / 新海誠

アニメーション映画監督新海誠さんの「言の葉の庭」ノベライズ版。

映画同様、澄み切った空気を持つ良い作品だった。

 

梅雨、雨の降る新宿御苑

高校二年生の秋月孝雄は、謎の女性雪野に出会う。

何気ない会話を通じて、二人は互いのことを意識し始めるようになる。

しかし、そんな二人をよそに、徐々に梅雨が明けていく。

 

 

本作の魅力は、作中に何度も登場する万葉集からの短歌の引用だ。

私は短歌には全然詳しくないが、その限定された文字数で情景や心情を想像させる力には圧倒される。

一度読むと、意味は分からずとも、なんとなく情景が目に浮かぶ。

引用される短歌は、それぞれの登場人物の心情をよく表しているもので、ストーリーと合わせて読むとより深みが増す。

 

オリジナルの映画では、当然ながら主人公の孝雄と雪野がメインで描かれている。

それでも十分引き込まれるストーリーなのだが、若干説明が足りない部分もあるため、少々疑問が残ったり、無理があったりする。

小説版では、映画では語られることのなかったそのような部分や、二人を取り巻くサブキャラクター達の物語も取り上げられている。

それにより、より物語に入り込みやすくなっている。

映画を観た時は「ん?」となっていた部分が、この物語を読むことで解消されると思う。

 

 

深い愛情と、それに伴う切なさなどが梅雨が醸し出す情景と共に丁寧に描かれた、さわやかな作品。

映画を観た人も観ていない人も、それぞれ楽しめると思う。