読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

緩くいこうぜ、人生長いんだ。

お前の人生ようやく始まったようなもんじゃん。

【感想】小説 秒速5センチメートル / 新海誠

いわずと知れた有名作品「秒速5センチメートル」のノベライズ版。

映画版は大学二年生位の時に観た記憶がある。
その時は、映像の美しさに感動したものの、ストーリーがいまいち理解できずに終わってしまった。
本作では、「小説 言の葉の庭」と同じく映画では語られなかったバックグラウンドが丁寧に描かれている。
なので、映画と合わせて読むとより一層楽しめると思う。


映画版を見終わった感想には賛否両論ある。
鬱エンド、女々しい、清々しい、感動した、など。
個人がどのような感想を抱くかは自由だ。
私は、そこに静かな優しさを感じる。


主人公の貴樹とヒロインの明里は小学生の頃から転校を繰り返していたため、自分の居場所を感じることが出来ないでいる。
そんな二人が運命的な出会いを果たし、互いのことを何よりも大切に思う。
しかし、運命は容赦なく二人を離ればなれにさせる。

その時、明里は寂しさや悲しみを感じながらも前に進もうとする。
一方の貴樹はそれを理解しながらも前を向けず、ずっと過去を見続けてしまう。
それ故、貴樹はその後どこか虚しさを抱えたまま生きていく。
それにより貴樹に好意を持った多くの女性を傷つけてしまう。
しかし、そんな彼も様々な別れや経験を経てようやく自らの足で生きていこうと決意する。
最後のシーンは、彼が自らの空虚さを認め、ようやく前を向く決意をする姿が綺麗に描かれている。


確かに女々しいし、情けない。
しかし、誰にでも大切な過去の思いではあるし、それにすがってしまう気持ちは分かるのではないだろうか。
なので、これは貴樹が過去に決別し、自らの足で歩こうと決意する救いの物語だ。

静かな悲しみと、そこから抜け出す勇気を感じられる澄んだ透明な物語。