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緩くいこうぜ、人生長いんだ。

お前の人生ようやく始まったようなもんじゃん。

【感想】夜行/森見登美彦

超久々の森見作品です。

森見ファンとして、書店で目に入った瞬間に買いました。

 

今回はこれまでの阿呆な話とは打って変わって、大きな盛り上がりもどんでん返しもないですが、「夜行」というタイトル通り、終始不気味な雰囲気で、物語に引き込まれます。

 

物語は、5人の登場人物達により、謎の銅版画家岸田道生の連作「夜行」にまつわる奇妙な出来事が語られる形式で進んでいきます。

 

ネタバレになりますが、「夜行」には正反対の連作「曙光」があります。

ですが、これら二つの作品は、同じ世界に存在しません。

「夜行」がある世界と、「曙光」がある世界があるのです。

二つはそれぞれの世界の入り口になっていて、それらを通じてもう一方の世界に行くことが出来ます。

 

「夜行」とは岸田が絶望の中で生み出した作品で、「曙光」は希望の中で生み出した作品です。

それは、それぞれの世界の岸田が、自らの求めるものを見つけた結果生まれたものでした。

「曙光」の世界では希望に満ちた生活を。

「夜行」の世界では絶望の中から見出した理想を。

どちらが良いとか悪いとかではなく、一つの世界というものを別の立ち位置で見たら違うものが出来た、というもの。

だから、本質的には「夜行」も「曙光」も同じなのです。

だから繋がっているけれども、同時には存在出来ないのです。

 

そんなことは、私達の生活にも言えるなーと思いました。

私たちは、一般的にポジティブとか元気とか、明るいものを良しとし、ネガティブとか元気がない状態を悪とみなします。

しかし、それらは実際には同じものの裏表な訳で、本質的には同じものを表しているのです。

だから、良い時もあれば悪い時もある。

目先の違いに捕らわれるのではなく、その奥の本質を見ましょう、と。

 

それはちょっと解釈をもはや作っているような気もしますが、なんにせよ、今までの森見作品と違う雰囲気を存分に味わえる作品でした。

 

夜行

夜行