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緩くいこうぜ、人生長いんだ。

お前の人生ようやく始まったようなもんじゃん。

【感想】よるのばけもの / 住野よる

2/50

 

久々の小説です。

作者は大ヒット作(らしい)「君の膵臓をたべたい」の住野よる。

読んだことないんですが、気になってはいます。

 

 

物語は、いきなり夜に化物に変身してしまう主人公の安達の独白から始まります。

安達というキャラクターに一貫している性格として、非常に淡白で一歩離れた所から物事を見ているので、独白の感じも妙に客観的。

淡々と描写される様子が、どこかフランツ・カフカの「変身」を思わせます。

 

怪物になった安達は、夜の学校に忍び込みます。

誰もいないはずの校舎で出会ったのは、クラスのいじめられっ子、矢野。

そんな彼女が夜の校舎にいるのは、「夜休み」のため。

化物の姿になった安達に驚くこともなく会話をする彼女。

安達も、彼女のことを面倒だと思いつつもともに夜の時間を過ごします。

 

矢野は、クラスの中で不気味な存在として扱われ、全員に無視され、いじめを受けています。

夜に矢野と話をする安達も例外ではなく、同じように彼女を無視します。

クラスの一員として和を乱さないことを良しとしてきた安達は、矢野との会話を通じてその異常性、自分の立ち位置を考え直すようになるのです。

 

 

テーマは、「高校生という閉じた空間の中での立ち位置」というありがちなもの。

ただ、他の作品と明らかに異なるのは、主人公が化物になるということ。

この化物になる、という設定は、とても上手い表現だと思います。

 

昼の安達は当然人間の姿で、自らの意志に関係なくクラスのルールに従い、矢野を無視します。

対して、夜は化物の姿となり、自らの意志で動き、矢野と話をします。

異なる時間帯でまるで別の人間。

そんな安達に、矢野はこう聞きます。

そっちが本、当の姿、なの?

腹の中に黒いものを抱える人間の姿をした安達と、化物の姿でも普通に矢野と接する安達。

どちらが「人間」で、どちらが「化物」なのでしょうか?

 

 

私達は誰しも周囲の環境とのやり取りの中で生きています。

そのため、自分に素直に生きるのはなく、周囲に合わせることも生きる上では大切になります。

特に、高校という閉鎖された空間の中ではおさら。

周りに合わせて生きることは悪いとは言いません。

しかし、その結果として周りの誰かを傷つけていることもある。

大切にするべきは自分の意志。

他の人とは違う自分の意志。

それを持つことが、「人間」であること。

そんなことを伝えようとしているように捉えました。

 

 

量はさほど多くなく、3時間くらいでサクサク読めます。

高校生のどす黒さに辟易しますが、物語として読みやすい、良い作品でした。

 

よるのばけもの

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