読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

緩くいこうぜ、人生長いんだ。

お前の人生ようやく始まったようなもんじゃん。

社会の縮図から

朝、いつもと同じ時間に同じ様に駅に着く。

なんだかいつもと少しだけ様子が違う。

毎日乗っている時間の電車が遅延しているらしい。

とはいえたかが5分程の遅れなので特別気にしない。

始業時刻には余裕で間に合うのだ。

 

既に出来ていた待ち列の後ろに付く。

電車を待っている間にも、私の後ろに同じ様な待ち人達が連なっていく。

皆一様に電車が来るのを待ち、それに揺られて何処かへ行くのだ。

私はスマホにイヤホンを刺し、最近お気に入りのエレクトロニカを聴き始める。

騒がしい朝、せめて耳元だけは静かにいたいものだ。

 

ようやくホームにやって来た電車が、ゆっくりと速度を落とし、私達の列の前にドアをピッタリと寄せ、止まる。

ドアが開こうとしたが、スムーズに開かない。

既に乗っている人達の圧力により、横方向に開く力が上手く伝わらないのだ。

苦しそうに何度もその身を震わせながら、ようやくドアは開き、電車への入り口を作り出す。

そこから吐き出される人々。

あるいは前を見ながら、あるいは手元の小さな画面を見ながらホームに降り立つ人々。

ここが停車駅では無いのだろう、階段に向かわずにドアの前に留まる人もいる。

それにより通路が狭められ、まるで詰まった血管の様に流れが悪くなっていく。

 

ようやく降車が終われば、次は乗車の番。

食い気味に鳴り響く発車のベルに焦りながら、前の人を押し退け、横入りをしながら、我先に電車に乗ろうとする人々。

その圧力に押されて、流されるままに電車に乗る私。

気付けば、押し合う人達の中に上手いこと収まっていた。

 

これだけ混んでいては何も出来ないと、スマホを取り出して本日分のブログを書くことを諦め、目を閉じる。

耳に嵌めたイヤホンから流れてくるエレクトロニカと、電車の一定の振動が心地良い。

何も感じずに心を落ち着かせれば、それはさながら小さな瞑想だ。

 

スマホへの電波が悪くなったらしく、唐突に音楽が途切れた。

 

目を開くと、そこは社会の縮図だった。

 

疲れ切ったサラリーマンの背中。

苦しそうに顔を歪めるおじさん。

大人達に紛れて辛そうな子供。

 

皆どこかを目指している。

それはきっと、どこかの誰かさんが勝手に作ったもので、そこに行くことが良しとされるもの。

早くそこに到着しようと、そこへと運んでくれる電車に我先に乗ろうとする。

他人を押し退け、邪魔をしながら。

そうやって頑張って乗った車内では、同じ様に乗り込んだ人達と固い枠の中で押し合いへし合いを繰り広げ、ようやく目的地に着く頃には、心も身体も疲弊している。

 

皆、そんな日々を繰り返して皆生きている。

そうやって生きている。

そして自分も、その中に上手いこと収まって生きている。

それが良いか悪いかは人それぞれで、誰かが勝手に判断することは出来ないけれども、その事実だけは動かせない。

 

そんな事を思っていたら、止まっていたエレクトロニカが唐突に再開した。

どうやら電波が復活したらしい。

 

私はもう一度目を閉じる。

流れてくる音に身を委ねながら自分の世界に入っていくのは、あるいはそんな現実から目を背けたいからなのかもしれない。